「パン食べたい!」
そう言いながら目を輝かせているつむぎをワタシの近くまで呼んだ。
「パパの口を見ててごらん」と言って、唇をモゴモゴさせるワタシをじっと見つめるつむぎ。
「パパこれ何?」
「今パンを作りようけん見ててごらん」
「パン?」
「まずはコネコネして、それから焼くよ。」
「…」
「チンッて鳴ったら焼けるけん待っててね」
「…」
黙って見続けるつむぎに向かい、「チンッ」と言いいながらワタシは唇をとがらせた。
あわよくばキスしてもらおう。
「はい、パンどうぞ」
そのとがらせた唇を無言で引っ叩かれて、今日は1日がスタートした。
お望み通り、本当のパン屋さんへ向けて出発。
今日も【フルフル】へ。
度々書いてきたけど、ここの明太フランスは本当にダントツ美味しい。
30センチほどのフランスパンの中に明太子がビッシリ。
他のパンも買ってるし1本で終わるつもりが、ついついおかわりでもう1本食べてしまった。
美味。ごちそうさまでした。
食後は遊具が設置されてあるスペースで、つむぎは運動タイム。
少しずつ風も冷たくなてきたので、ひかりはツマと店内に。
休日と言う事もあり、そこのスペースには子どもたちがたくさん。
これだけ色んな年の子がいる中で、ムスメはどうやって遊ぶか、他の子にはどうやって接するか、そして他の子はどうやってムスメに接するか。
自分で考え、主張し、行動する。
これを見届ける為に、ワタシは少し離れたところからじっと見ていた。
「自分が優先!」と言う考えでもおかしくない年の子たちにも、幼い子には幼い子同士の世界がちゃんとあって、突然仲良くなって一緒に遊んだり、遊具を譲り合って遊んでいたり。
「立派だな」と感心させらる場面が多かった。
つむぎがブランコで遊んでいると、「ブランコ乗りたいよ」と言っている女の子がいた。
ワタシはつむぎに「ブランコ止まったら友だちに交代しよう」と言い、ブランコが止まるとつむぎも素直に「はいどうぞ」と順番を変わった。
すると、その子のお姉ちゃんがつむぎに近寄り「ありがとう!偉いね!かわいいね!」と言ってつむぎの事を褒めてくれた。
優し子だなと思い、ワタシも近づいてそのお姉ちゃんに「ありがとう」とお礼を。
それからしばらく一緒に遊んでくれて、その度に「上手だね!すごいね!」と褒めてくれて、つむぎはずっと笑顔。
「優しくしてくれてありがとうね。すごくしっかりしてるね」と、ワタシがその子に。
「いえいえ!しっかりしてるとはよく言われます!」
言葉遣いまで素晴らしい。
「今何年生?」
「今、2年生です!」
「えっ!?」
思わず声を出して驚いた。
2年生でこれだけしっかりとしているのは、きっと親子の関係がしっかりしていて、親の言う事を素直に聞いている証拠だと思った。
「たくさん褒めてあげたら、仲良くなれますよ!」
その子はワタシにアドバイスをくれた。
なるほど。この子の親はこうやって、いい関係性を作っているのか。
勝手に想像が膨らむ、微笑ましい親子関係。
風の冷たさを忘れさせるくらい心が温まったその時、女の子は話しを続けた。
「ちなみに、私は父の事は嫌いです。なんか、合わないんですよね。」
立派な口調で、ワタシの心に冷たい風を吹かせた。
「それでは、帰ります」と言ってつむぎの頭を撫でるその子に、「ありがとう。パパと仲良くね」とだけ伝え、ワタシは手を振った。
走り去るその後ろ姿を目で追うと、しっかりお父さんの隣にくっついて帰る姿が見えた。
口ではそう言いながらも、後ろ姿はどこか嬉しいそうでまた心が温まった。
子どもたちの『小さな世界』に少し入り込んでみると、いろんな景色が見れて楽しかった。
子どもから学ぶ、子どもへの接し方。
勉強になりました。
ツマが外に出てきた時、ひかりはぐっすり眠ってしまったから、車に乗りパン屋を後にした。
買い物を済ませ家に帰り、ワタシがムスメたちとお風呂に入っている間にツマは夕飯の準備をしてくれている。
そんないつも通りの夜を迎えるはずが、ここで一波乱。
ワタシがつむぎの髪を乾かす為にドライヤーを取りに行ったその瞬間、「ドンッ」と大きな音とともにひかりの泣き声が。
慌ててひかりに駆け寄ると、つかまり立ちしている時に転んでしまったようで、その際におでこを棚にぶつけてしまっていた。
うっすら血が滲み、ぽこっとタンコブが。
驚いてパニックになり大泣きするひかり。
頭をぶつけているから心配で、「少しでも様子がおかしそうだったら病院へ」とツマと話していたけれど、しばらくツマにギュッと抱っこされると落ち着きを取り戻し、グタッとする事もなく、いつも通り笑顔で元気に遊び始めたから安心した。
明日、先日受けたアレルギー検査の結果を聞きに小児科に行く用があるから、その時にまた診てもらおう。
いつもひかりが大泣きすると、つむぎは次々におもちゃを持ってきてどうにか楽しませようと頑張る姿が、とても微笑ましかった。
寝る時間まで、さっきまでのハラハラした時間を忘れるように皆んなで大笑いしながら遊んだ。
泣いて笑って疲れたひかりは先に夢の中へ。
ひかりの為に今自分が出来る事を一生懸命考えて行動してくれたつむぎを、ツマとワタシはとにかく褒めた。
照れ笑いするつむぎ。
一波乱起こる度に、心配した分その後の笑顔を見るとムスメたちへの愛おしさが増す。
「つむぎが怖いと思ったり、嫌だと思う事があったら何でもいいからパパとママに話すとよ。1人で考えないでパパとママに話すとよ」
これからあの『小さな世界』で生活していくつむぎと、大切な約束を交わした。
「そうよ。ちゃんと話してね」
ツマもつむぎの頭を優しく撫でながら微笑みかけた。
何でも話せる環境を準備してあげるのは、親としての大事な役割だと思っている。
心が傷つく事があった時、家族を逃げ場にしてほしい。
そんな思いで約束を交わした。
つむぎはツマとワタシを見つめ、幸せそうな表情で口を開いた。
「食べたいものがあった時とか、欲しいものがあった時は、パパとママにお話しすると?」
何も伝わってなかった。
その上、自分に都合のいい約束に差し代わっていた。
悪いがその約束は、却下。
仕方がない。
ゆっくり、時間をかけて伝えていこう。
寝室を覗くと、ひかりのタンコブは少し小さくなっていた。
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