眠れる獅子。
いよいよ発表会前日。
朝起きてきたひかりの熱を測ると、37.4度。
保育園のルールとして、37.5度以上の熱が出た場合、そこから24時間は登園ができない。
もし今朝の検温で37.5度以上だったら、その時点で明日の発表会は断念しなければならなかった。
ルール上、37.4度はギリギリセーフのライン。
だが、このまま保育園に連れていくとそこでまた熱が上がってしまう可能性がある。
そうなれば即アウト。
ひかりには明日の発表会で『どうぶつサーカスのライオン役』という超大役が待っている。
だからつむぎはいつも通り保育園へ見送り
ひかりは大事をとって今日は家で過ごさせることにした。
ひかりは元気もあって、食欲もいつも通り。
熱は37.4度でもう微熱といったところ。
ただ、ゲホゲホと咳が気になった。
手作り味噌を切らして以降、また再発した喘息気味のひかりの咳。
それが今回の発熱によって少しひどくなったように感じた。
だから肺炎を起こしてしまわないように、一応かかりつけの小児科へ連れて行くことに。
一応のつもりだったのに
小児科に到着しての検温
38.2度。
嫌な気しかしなくなった。
待合室でのひかりも元気いっぱい。
さっきの『38.2度』を忘れてしまえば、いつも通りのひかりに見える。
『サノさーん』
看護師さんに呼ばれ、いよいよ診察室へ。
〈何もないよな。ただの風邪だよな〉
心の中でそう願い、目の前では鼻の中へ綿棒を入れられ診察に耐えるひかり。
〈何もないよな。何もないよな…〉
検査結果を待つこと約15分。
結果…
『RSウイルス』
この瞬間、ひかりは明日の発表会の欠席が確定した。
なんとうか、胸が締め付けられる思いでいっぱいだった。
ひかりにとっては人生初の発表会。
毎日保育園に送り迎えする中で、これまでひかりが明日の発表会に向けてどれだけ張り切って練習に励んできたか、その話しをよく先生から聞いていた。
それが結果、ウイルスによる欠席。
誰が悪いわけでもないんだけど、ひかりごめんね。
現在23時。
ひかりは既に夢の中だけど、この日記を書いている今でさえ欲を言えば発表会に出してあげたかった。
この状況が分かっているかどうかは分からないが、ワクワクさせたくなかったからとりあえず日中はこれ以上発表会の話しをするのはやめた。
そう決めた病院からの帰り道
最後に1回だけひかりに尋ねた。
『ひかり、発表会でライオンはなんて言うと？』
家での練習のために、今まで何度も何度もしてきたこの会話。
これが最後の練習。
『ガオ〜！』
ライオンのポーズをとりながら
ひかりはキラキラとした笑顔で練習の成果を披露してくれた。
ひかり
パパにとってのこの『ガオ〜！』は
涙が込み上げてきそうなほど感動的な演技だったよ。
明日はステージに立ってお友だちと一緒には出られないけど
やっぱりひかりのライオンは立派な主役だった。
今はとにかくゆっくり眠ってウイルスをやっつけよう。
よし、ひかりの分まで明日はしっかりつむぎを応援だ！
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