『パパ、綺麗な海に連れてって』
どこで覚えてきたのか分からないドラマの様なセリフで、つむぎは時々ワタシをドキッとさせる。
天気は曇り。
海水に足をつけるくらいなら大丈夫だろうという事で、決して綺麗な海ではないけれど近くの海まで車を走らせた。
ひかりにとっては、これが初めての海。
行きの車内では、つむぎを初めて海に連れて行った時の写真を見ながら思い出に浸った。
『こわいよ〜!こわいよ〜!』
スマホの中に保存されているまだ幼いつむぎは、そう言って泣き叫んでは、海に触れない様に必死にワタシにしがみついていた。
「懐かしね。可愛いね」
ツマと記憶をタイムスリップさせながら、微笑ましい気持ちのまま海に到着。
たったこの1、2年で、つむぎはずいぶんとたくましくなった。
到着してすぐに1人で海まで直行。
そして、ずぶ濡れ。
『海水に足をつけるだけね』
こんな約束なんて最初からしていなかったかの様に、つむぎは勢いよく服を脱ぎ捨てた。
(それをワタシが慌てて拾い集める)
一方、海初体験のひかりはリアクションが初々しい。
これこれ!
オムツをちらつかせながら、力一杯抱きしめたくなる様なこのリアクション。
これが可愛い。
砂浜の上に立たせてみても、足の裏に感じる違和感で全く動けなくなっていた。
これこれ!
少し内股で、申し訳なさそうな表情を浮かべながら立ち尽くす。
これが可愛い。
行きの車内で、懐かしく思いながら見ていたつむぎもこうっだった。
あの頃は自分の力だけではどうしようもなく、ただただ立ち尽くしていただけだった。
海水に触れるのが怖くて、絶対に下に落ちないように力一杯ワタシにしがみついているだけだった。
そんな初々しく可愛い頃もあったのに
今では1人で海に飛び込み
速攻でずぶ濡れになり
服を脱ぎ捨て
水着の代わりに腰にタオルを巻いて
ドヤ顔で取ったワカメを見せつけてくるようになった。
これが成長か。
これはこれで可愛いけど…。
『海に行ったらポニョに会えるかもね』
そんな会話をしながら海まで来たから、海に向かってつむぎは必死。
『ポ・ニョ〜!ポ・ニョ〜!おいで〜!』
腰にタオルを1枚巻いて、手にはワカメを持った人間に名前を連呼されたら、さすがにポニョも怖くて会いに来づらいだろうな。
ワタシはこの気持ちを言葉にするのは我慢し、黙ってその様子を眺め続けた。
次は晴れた日に、水着を持って連れて行こう。
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